6 弦ベースのタッピングは、両手で多くの音を鳴らすための奏法ではありません。低音、和音、メロディを左右の手へ分け、一人で複数の役割を組み立てるための奏法です。
速いフレーズだけを目標にすると、音は増えても、ベースとして何を支えているのかが分からなくなります。先に低音の重心を決め、その上へ高音を重ねると、6 弦ベースの広い音域を音楽として使いやすくなります。
6 弦ベースの音域を確認する
一般的な 6 弦ベースは、低い方から B–E–A–D–G–C に調弦します。4 弦ベースへ低 B 弦と高 C 弦を加えた構成です。
| 弦 | 主な役割 | タッピングでの使い方 |
|---|---|---|
| 低 B/E | 低音の根音と重心 | 左手で保持し、拍やコードの土台を作る |
| A/D | 中低域のコード構成音 | 根音から和音へつなぐ |
| G/高 C | 高音の和音とメロディ | 右手でタップし、旋律や上声部を作る |
高 C 弦があるため、同じポジションの中で低音と高音を分けやすくなります。ただし、高音域が使えることと、高音を常に鳴らすべきことは別です。高 C 弦は、低音を残したまま別の声部を置くための余地として考えます。
左手と右手の役割を先に決める
タッピングでは両手が発音に参加するため、どちらの手でも同じように音を出せます。しかし、練習の初期から役割を曖昧にすると、フレーズの構造も曖昧になります。
| 分担 | 左手 | 右手 | 確認すること |
|---|---|---|---|
| 低音+単音 | 根音を鳴らす | 高音のメロディを鳴らす | 根音が途中で消えていないか |
| 低音+和音 | 根音と 5 度を作る | 3 度や 7 度を加える | 音を増やしすぎて濁っていないか |
| 対旋律 | 低音側の短い動きを作る | 逆方向の高音を作る | 二つの旋律を別々に聞き取れるか |
最初は「左手は低音、右手は高音」と固定した方が分かりやすいでしょう。慣れた後で役割を交換すれば、単なる運指練習ではなく、声部を組み替える練習になります。
練習 1:右手のタップだけで均一に発音する
最初から両手を組み合わせず、右手だけで G 弦または高 C 弦をタップします。同じフレットを 4 分音符で繰り返し、音量、アタック、音価を揃えます。
- メトロノームを遅いテンポに設定する
- 右手の同じ指で、同じフレットを 4 回タップする
- タップした指を離すとき、開放弦や別の音が鳴らないように止める
- 人差し指と中指を交互に使い、音量差を確認する
強く叩かなければ音が出ない場合は、指を大きく振り上げるのではなく、フレットの近くへ短い距離で当てます。必要以上に強く叩くと、音程が一時的に上ずり、後のフレーズでも音量差が大きくなります。
練習 2:低音を残して高音を重ねる
次に、左手で低音弦の根音を鳴らし、その音を伸ばしている間に、右手で高 C 弦の音を 2 音だけ加えます。低音を 1 小節に 1 回、高音を 2 拍目と 4 拍目に置く程度から始めます。
| 拍 | 左手 | 右手 | 聞く対象 |
|---|---|---|---|
| 1 | 低音の根音を発音 | 休符 | 低音の立ち上がり |
| 2 | 根音を保持 | 高音を 1 音タップ | 低音が消えないか |
| 3 | 根音を保持 | 休符 | 不要弦が鳴っていないか |
| 4 | 根音を保持 | 別の高音をタップ | 二つの高音の音量差 |
右手の音を増やすほど、左手の低音が短くなりやすくなります。高音の成功だけを確認せず、低音が意図した長さで残っているかを聞きます。
練習 3:3 度と 7 度でコードを示す
根音の上へコード感を加える場合、すべての構成音を鳴らす必要はありません。左手で根音を鳴らし、右手で 3 度または 7 度を加えるだけでも、長調、短調、セブンスの性格が見えます。
- 根音+長 3 度:明るい長三和音の輪郭
- 根音+短 3 度:短三和音の輪郭
- 根音+短 7 度:ドミナントやマイナーセブンスの輪郭
- 根音+長 7 度:メジャーセブンスの緊張感
低い位置で複数の音を重ねると濁りやすいため、根音は低 B/E 弦、コードの性格を示す音は G/高 C 弦へ離します。6 弦ベースの音域差を使う意味は、音数を増やすことより、各音の配置を分けられることにあります。
練習 4:低音と高音を逆方向へ動かす
両手の独立を高めるには、左手の低音を上行させながら、右手の高音を下行させます。最初はそれぞれ 2 音だけにし、左右を別々に練習した後で重ねます。
ここで難しいのは運指よりも、不要になった音を止めるタイミングです。新しい音を鳴らす直前に古い音を止めると音が途切れ、止めるのが遅いと音が重なります。左右それぞれの発音と消音を一組として練習します。
不要弦のミュートを左右へ分担する
6 弦ベースは共振する弦が多いため、タッピングでは発音していない弦の管理が重要です。両手が指板上へ移動すると、通常の指弾きで使っていた右手親指のミュートも使いにくくなります。
| 対象 | 主なミュート方法 |
|---|---|
| 発音位置より低い弦 | 左手の使っていない指、右手の手首や親指を軽く触れさせる |
| 発音位置より高い弦 | 左手の押弦指を少し寝かせ、隣接弦へ触れる |
| タップ後の弦 | 右手の指を離す動作と同時に、別の指で振動を止める |
| 開放弦 | フレットラップだけに頼らず、左右の手で止める位置を決める |
ミュートが不十分な状態でコンプレッサーや歪みを強くすると、小さな共振まで持ち上がります。機材で隠す前に、生音またはクリーンな音で不要弦を確認します。
左右の音量差を録音して確認する
左手のハンマリングと右手のタッピングでは、発音方法が異なります。本人には同じ強さに聞こえても、録音すると右手のタップだけが突出したり、左手の低音が埋もれたりします。
- クリーンな音で短いフレーズを録音する
- 低音だけ、高音だけを個別に録音する
- 両方を重ね、片方だけが大きくなっていないか確認する
- コンプレッサーを使う場合も、先に手の強さを近づける
- 最後にドラムやコード伴奏と合わせ、低音の位置を確認する
音量を揃えることは、すべての音を同じ強さにすることではありません。低音を土台として残し、高音を前へ出すのか、背景へ置くのかを意図して決めます。
参考にしたフレーズ動画を確認する
この記事を最初に書いた当時に参考にしていた「6-string Bass Tapping Phrase Idea」は、現在も再生と埋め込みが可能でした。検索リンクではなく、実際に確認できた動画を直接参照します。
動画を見るときは、速さだけでなく、低音が鳴る拍、右手が担当する弦、音を止める指を確認します。フレーズ全体をそのまま覚えるより、低音、和音、高音の三つへ分解した方が、自分の演奏へ転用しやすくなります。
参考資料
- 6-string Bass Tapping Phrase Idea #01 – #05 ベースタッピングフレーズ集【TAB譜付】 / nussy 6-string bass solo
- 6-string Bass Tapping Phrase Idea #06 – #10 ベースタッピングフレーズ集 / nussy 6-string bass solo
- Two-Hand Bass Tapping Exercise with John Ferrara / Scott’s Bass Lessons
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まとめ
6 弦ベースのタッピングは、高 C 弦で目立つフレーズを弾くためだけの奏法ではありません。低 B/E 弦の重心を残しながら、G/高 C 弦へ和音やメロディを置き、複数の声部を構成する奏法です。
右手の単音、低音との重ね方、3 度と 7 度、反対方向の動き、ミュート、音量差の順に分ければ、派手さに頼らず練習できます。音を増やす前に役割を分けることが、6 弦ベースの広い音域を使う出発点になります。
書籍
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