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オーディオインターフェイスのヘッドフォンをワイヤレス化しようとして失敗した話 – 遅延と音質の壁

自宅でベースを演奏するとき、オーディオインターフェイスを介してヘッドフォンでモニターしています。YouTube や音源に合わせて練習できるので便利なのですが、ベースのシールドとヘッドフォンのケーブルが絡まるのが地味に面倒でした。

そこで、ヘッドフォンをワイヤレス化できないかと考えました。有線出力を Bluetooth に変換するトランスミッターを使えば、オーディオインターフェイスのヘッドフォン出力をワイヤレス化できるのではないか、という発想です。結論から言えば、音楽を聴く用途なら成立しても、ベース演奏のモニター用途では失敗でした。

この記事では、当時試した Bluetooth トランスミッターの失敗を、音質ではなくレイテンシの問題として整理します。便利さだけで考えるとワイヤレス化は魅力的ですが、演奏モニターでは「音が遅れて返ってくること」がかなり大きな問題になります。

試したのは Bluetooth トランスミッター

当時、Amazon で検索して見つけた TaoTronics の TT-BA09 という Bluetooth トランスミッターを試しました。価格も手頃で、普通に音楽を聴く用途としては評判も悪くなさそうでした。有線のヘッドフォン出力を Bluetooth へ変換できるなら、オーディオインターフェイスの周りのケーブルを少し減らせると考えました。

一抹の不安はありましたが、安かったので購入しました。ヘッドフォンも合わせて買って試しましたが、結論として、ベースの演奏モニターには全く使えませんでした。製品が壊れていたという話ではありません。用途が合っていなかったのだと思います。

ここで重要なのは、Bluetooth トランスミッターが悪いということではなく、音楽再生用のワイヤレス化と、楽器演奏用のモニターは要求条件が違うということです。音楽を聴く時には気にならない遅延でも、自分が弾いた音を聴きながら演奏する用途では大きな違和感になります。

失敗した理由はレイテンシ

最大の問題は遅延です。自分がベースを弾いてから、ヘッドフォンに音が返ってくるまでに明確な遅れがありました。これが演奏では致命的でした。音質が少し落ちる程度なら我慢できるかもしれませんが、タイミングがずれると練習そのものが成立しにくくなります。

普通に音楽を聴くだけなら、多少の遅延はあまり気になりません。動画でも、再生環境によっては映像側を遅らせるなどして補正されることがあります。しかし、楽器演奏では、自分の手の動きと返ってくる音が直接結びついています。自分が弾いた瞬間と音が返る瞬間がずれると、身体の感覚が崩れます。

Qualcomm の aptX Low Latency は約 40 ms の遅延をうたっていますが、これは主に映像と音声の同期やゲーム用途を意識した説明です。Bluetooth SIG も、Bluetooth Classic Audio ではバッファによる遅延が発生しやすく、LE Audio では遅延改善が課題の一つだったと説明しています。つまり、Bluetooth 音声では、そもそも遅延が重要な設計課題になります。

演奏モニターでは、約 40 ms でも快適とは限りません。クリックや原曲に合わせてベースを弾く場合、自分の音が遅れて返るだけで、タイミングの判断が狂います。音楽再生では許容できる遅延が、演奏では許容できないことがあります。

音質よりもタイミングが先に問題になる

この手の話では、音質を気にしがちです。もちろん音質も大事です。低音が痩せる、ノイズが乗る、圧縮感があるといった問題があれば、演奏していて気持ちよくありません。ただ、演奏モニターでは音質以前にレイテンシが重要です。

特にベースは、リズムと低音の土台を作る楽器です。クリックや原曲に合わせて練習しているときに、自分の音が遅れて返ってくると、何を基準に弾けばよいのか分からなくなります。これは慣れでどうにかするというより、モニター環境として厳しいと感じました。

Yamaha は、録音時のレイテンシは演奏のタイミングを乱すため、バッファ設定やダイレクトモニタリングが重要になると説明しています。Steinberg も UR-C シリーズの説明で、DSP を使ったレイテンシの少ないモニタリングを特徴として挙げています。つまり、オーディオインターフェイスが低遅延モニターを重視するのは、演奏中の遅延がそれだけ問題になるからです。

音楽再生用としては問題なかった

誤解のないように書くと、通常の音楽を再生して聴く用途では、製品として悪いとは感じませんでした。ワイヤレスで音楽を聴く分には普通に使えると思います。問題は、今回の目的が音楽鑑賞ではなく、ベース演奏時のモニターだったことです。

音楽再生では、音が少し遅れても、自分の身体の動きと直接ぶつかりません。動画であれば同期補正が効くこともあります。しかし、演奏では自分の指、弦、ピッキング、返ってくる音が一つの閉じた感覚になります。その中に遅延が入ると、演奏していて非常に気持ち悪いです。

結局、持っていても使い道がなかったため、すぐに売却しました。購入時は数千円でしたが、売却額はかなり寂しいものでした。高い勉強代というほどではありませんが、「用途を間違えると安い機材でも無駄になる」という意味では、なかなか分かりやすい失敗でした。

用途ごとに向き不向きが分かれる

Bluetooth によるワイヤレス化は、用途によって評価が大きく変わります。音楽を聴く、動画を見る、通話する、ゲームをする、楽器を演奏する。どれも音を扱いますが、必要な遅延、音質、安定性は同じではありません。

用途ワイヤレス化の評価理由
音楽を聴く成立しやすい遅延が体感上問題になりにくい
動画を見る環境次第で成立する映像側の補正でずれを感じにくい場合がある
ゲーム低遅延対応が重要操作と音のずれが体験に影響する
楽器演奏のモニターかなり厳しい自分の演奏音が遅れて返るとタイミングが崩れる
宅録有線が無難録音時の判断に遅延が混ざると演奏しにくい

このように分けると、今回の失敗はかなり自然です。音楽再生用として成立する機材を、演奏モニター用として使おうとしたことに無理がありました。求めていたのは「音を飛ばす機能」ではなく、「ほぼ遅れずに自分の演奏を返すこと」だったからです。

オーディオインターフェイスでは有線が無難

結論として、オーディオインターフェイスで楽器をモニターするなら、有線ヘッドフォンが無難です。ケーブルが邪魔になる問題はありますが、遅延が少なく、演奏に集中できます。自宅練習や宅録では、便利さよりもタイミングの安定性を優先した方が良いです。

どうしてもケーブルを減らしたい場合でも、一般的な Bluetooth トランスミッターで解決しようとするのは厳しいと思います。楽器用の低遅延ワイヤレスシステムや専用機材でなければ、演奏モニター用途には向きにくいです。少なくとも、普通の音楽再生用ワイヤレス機器をそのまま流用する発想は危険です。

ワイヤレス化は便利です。ケーブルが減るだけで、部屋での取り回しはかなり楽になります。しかし、演奏では便利さよりもタイミングの正確さが優先されます。音楽を聴くためのワイヤレスと、演奏するためのモニターは別物です。

まとめ

オーディオインターフェイスのヘッドフォン出力を Bluetooth トランスミッターでワイヤレス化しようとしましたが、ベース演奏には使えませんでした。理由は音質ではなく、レイテンシです。自分が弾いた音が遅れて返ってくると、タイミングの判断が崩れます。

音楽再生用としては問題がなくても、演奏モニターでは要求条件が変わります。宅録や楽器練習では、結局のところ有線ヘッドフォンが一番無難です。ワイヤレス化したい気持ちは今でも分かりますが、演奏用のモニターでは、まず遅延を疑うべきだと思います。

参考資料

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