2021 年当時の世論調査では、自民党の支持率が 30% 台前半まで下がっていました。新型コロナウイルス対応への不満、政権内部の混乱、説明責任の弱さが重なり、政権への信頼が揺らいでいた時期です。
ただし、支持率が下がったからといって、それがそのまま政権交代につながるわけではありません。むしろ日本政治の難しさは、自民党への不満があっても、野党支持や政権交代への期待に直結しにくいところにあります。
この構図は、その後さらに分かりやすくなりました。2024 年 10 月 27 日の衆議院選挙では、自民党と公明党が過半数を割り込みました。2025 年 7 月 20 日の参議院選挙でも、与党は過半数維持が難しい結果になりました。つまり、自民党不信は実際に議席へ反映されています。それでも、2009 年のような明確な政権交代にはつながっていません。
書籍
民主主義とは何か
選挙、政党、代表制、説明責任について考えるための参考書籍です。世論調査と政権交代の関係を考える補助線として紹介します。価格や在庫はリンク先で確認してください。
Amazon で見るこのリンクは Amazon アソシエイトリンクです。
世論調査で見えるのは支持率だけではない
2021 年当時の調査では、自民党の支持率が 33.7%、立憲民主党が 5.8%、公明党が 2.9%、日本維新の会が 1.6%、共産党が 3.1%、国民民主党が 0.6%、社民党が 0.2%、れいわ新選組が 0.3% などとされていました。一方で、特に支持している政党がないと答えた人は 43.8% でした。
この数字で重要なのは、自民党の支持率が下がっていることだけではありません。それ以上に、無党派層が非常に大きく、野党第一党の支持率が十分に伸びていないことです。政権への不満はあるが、次の選択肢が明確になっていない。ここに日本政治の停滞があります。
2026 年 7 月 13 日に NHK 世論調査として報じられた各党支持率でも、自民党は 35.7%、特に支持している政党はないと答えた層は 37.0% でした。調査主体や方法によって数字は変わりますが、与党への不満がそのまま特定野党への支持に移るわけではない、という構図は残っています。
自民党不信は選挙結果に出ている
自民党不信が単なる空気で終わっているわけではありません。2024 年の衆議院選挙では、自民党が 191 議席、公明党が 24 議席となり、与党は過半数である 233 議席に届きませんでした。立憲民主党は 148 議席に伸び、国民民主党やれいわ新選組も議席を増やしました。
2025 年の参議院選挙でも、与党は過半数を維持できませんでした。自民党と公明党が厳しい結果となる一方、国民民主党や参政党のように、既存の野党第一党とは別の勢力も伸びました。
ここで見えるのは、自民党不信が野党第一党へまっすぐ集まるわけではないということです。批判票は、立憲民主党、国民民主党、維新、れいわ、参政党、保守系の新興勢力、あるいは棄権や無党派に分散します。自民党が弱っても、反自民の側が一つの政権選択肢としてまとまらなければ、政権交代は起きにくいままです。
不満と政権選択は別の行動である
有権者が政権に不満を持つことと、別の政権を選ぶことは同じではありません。不満を持つだけなら、世論調査で内閣支持率や政党支持率を下げることができます。しかし、選挙では候補者名を書き、比例では政党名を書き、政権運営を任せる相手を選ばなければなりません。
自民党への不満が広がっても、それが野党支持に直結しない理由はいくつかあります。野党に政権担当能力への不安があること、政策の違いが有権者に伝わりにくいこと、政党間の協力関係が見えにくいこと、そして有権者の側に現状維持を選びやすい心理があることです。
日本では、政治に不満を持ちながらも、変えるリスクを避ける傾向が強いように感じます。その結果、自民党への支持が積極的な支持ではなくても、選挙では自民党が相対的に有利になる構造が残ります。
選挙制度は最大政党を有利にする
衆議院の小選挙区では、各選挙区で一人しか当選しません。野党側が分裂すれば、反自民票の合計が多くても、自民党候補が勝つことがあります。選挙は単純な支持率の足し算ではなく、候補者調整、投票率、地域組織、比例票、小選挙区ごとの競合関係によって結果が変わります。
その意味で、自民党にとって重要なのは、すべての有権者から強く支持されることではありません。一定の固定支持層を維持し、野党側を分散させ、無党派層の投票行動を鈍らせることです。これは民主主義として健全な状態とは言いにくいですが、選挙制度の中では非常に強い戦略になります。
一方で、野党側にも厳しい現実があります。候補者を一本化すればよい、という単純な話ではありません。政策の違い、支持層の違い、外交・安全保障・経済政策の距離、地方組織の弱さを無視して表面上だけ協力しても、有権者には不自然に見えます。
多党化は政権交代を近づけるとは限らない
2024 年以降の選挙を見ると、日本政治は二大政党制へ向かっているというより、多党化しているように見えます。自民党が弱る一方で、立憲民主党だけが大きな受け皿になるのではなく、国民民主党、維新、参政党、れいわ新選組、日本保守党、チームみらいのような勢力にも票が流れています。
多党化そのものは悪いことではありません。有権者の選択肢が増えることには意味があります。ただし、多党化は政権交代を近づける場合もあれば、逆に政権選択を難しくする場合もあります。反自民の票が分散し、連立の組み合わせが見えず、どの政策軸で政権を作るのかが曖昧になれば、政権交代は遠のきます。
自民党に腹が立つ。既得権益を守る政治にうんざりする。説明責任を軽く扱う政治文化を終わらせたい。そう思っても、投票先がばらばらになり、政権の形が見えなければ、その怒りは制度上の力になりにくいのです。
野党を育てるという視点が必要
政権交代を望むなら、単に自民党を批判するだけでは足りません。野党が現実的な政策を示し、政権を担える存在として信頼を積み上げる必要があります。同時に、有権者の側にも、野党を一度の失敗で切り捨てず、政治勢力として育てる視点が必要です。
もちろん、野党に甘くすればよいという話ではありません。批判されるべき点は批判されるべきです。ただ、自民党に対しては長期政権を許し、野党に対しては即座に完璧を求めるという態度では、政権交代の土台は育ちません。
野党に必要なのは、反対の声だけではありません。政権を取った時に何を優先し、誰の負担を変え、どの制度を変え、どこで妥協しないのかを示すことです。自民党ではない、というだけでは弱い。自民党政治の何を終わらせ、何を作り直すのかを言葉と人材と組織で示す必要があります。
政権交代が起きにくい社会の停滞
政権交代が起きにくい社会では、政治に緊張感が生まれにくくなります。与党は固定支持層を見て政治を行い、無党派層は政治から離れ、野党は存在感を失っていく。その結果、政策の失敗や利権政治があっても、大きな変化が起きにくくなります。
これは民主主義として健全とは言いにくい状態です。政権交代が常に正しいわけではありませんが、政権交代の可能性が現実的に存在することは、政治に説明責任と緊張感を持たせるために重要です。
自民党への怒りだけでは足りません。怒りを、投票先、政策、候補者調整、政党組織、国会での交渉、地方政治の変化へつなげなければ、政治は変わりません。政治文化を変えるには、単発の選挙結果ではなく、継続的に政権交代が起こり得る状態を作る必要があります。
まとめ
世論調査から見えるのは、自民党の支持率低下だけではありません。より大きな問題は、自民党への不満があっても、それが野党支持や政権交代への力に変わりにくい構造です。
2024 年の衆議院選挙と 2025 年の参議院選挙で、自民党と公明党への不満は実際に議席へ反映されました。それでも、明確な政権交代には至っていません。批判票が分散し、無党派層が大きく、野党の連立像が見えにくいからです。
政権交代を現実的なものにするには、野党の力量だけでなく、有権者の政治参加、無党派層の判断、政党間の協力、選挙制度への理解が必要です。日本政治の停滞は、政党だけでなく、有権者側の選択の積み重ねによっても作られています。自民党政治を終わらせたいなら、怒りを分散させず、政権を置き換えられる構造へ変える必要があります。

