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DDBR とは何か – 大型シャーシルーターを分解して分散型にする考え方

DDBR は、Disaggregated Distributed Backbone Router の略として説明される、キャリアバックボーン向けの分解型・分散型ルーターアーキテクチャです。

従来の大型シャーシルーターが 1 つの筐体の中に閉じ込めていたラインカード、ファブリック、制御、運用責任の境界を外へ出し、複数の装置とソフトウェアを組み合わせて大きなルーターとして扱う考え方です。

ただし、公開資料では DDBR という略語そのものよりも、TIP の OOPT、OCP の DDC、disaggregated routing、disaggregated chassis といった周辺の言葉で語られることもあります。この記事では、DDBR を「大型シャーシルーターの内部構造を分解し、ラックスケールで分散構成するキャリア向けルーターアーキテクチャ」として整理します。

これは、単なる将来構想ではありません。通信キャリアのバックボーンやコアルーターを、従来の大型専用シャーシだけでなく、分解されたハードウェアとソフトウェアの組み合わせで構成しようとする流れの中にあります。

重要なのは、DDBR を「安いホワイトボックスを並べる話」として見ないことです。むしろ、大型シャーシルーターが 1 台の製品の中に閉じ込めていた構造を、外側に取り出して再設計する話です。

従来の大型シャーシルーター

通信キャリアのコアネットワークやバックボーンネットワークでは、長らく大型のシャーシ型ルーターが使われてきました。

1 つの大きな筐体の中に、外部インターフェースを収容するラインカード、内部転送を担うファブリック、制御部、電源、ファンなどを収め、巨大な 1 台のルーターとして動かす構成です。

これは非常に強力な仕組みです。性能も高く、信頼性も高く、通信キャリアのバックボーンを支えるために長年使われてきました。

一方で、課題もあります。大型シャーシルーターは、基本的に特定ベンダーの専用製品です。ハードウェア、ソフトウェア、ASIC、保守、運用モデルまでが一体化されています。

そのため、導入コストは高くなりやすく、拡張や世代更新も重くなります。もっと帯域が必要になればラインカードを追加し、それでも足りなければ、より大きなシャーシや次世代の専用プラットフォームへ移行することになります。

従来の大型ルーターは強力ではあります。しかし、拡張の単位が重く、特定ベンダーへの依存も強くなりがちです。

DDBR が見直したのは、この「1 つの巨大な専用筐体」としてルーターを作る発想です。大型シャーシの中に閉じ込めていた構造を分解し、よりオープンで、分散的で、拡張しやすい形に組み替えようとします。

雑に言えば、大型シャーシルーターの中にあった構造を、ラックスケールに外へ展開する考え方です。

Disaggregated とは何か

DDBR の 1 つ目の重要な言葉は、Disaggregated です。これは「分解された」という意味です。

従来のキャリアルーターは、ハードウェアとソフトウェアが一体化された完成品として提供されることが一般的でした。しかし DDBR では、ハードウェア、ネットワーク OS、制御ソフトウェア、運用システムなどを分離して考えます。

たとえば、ハードウェアはオープンネットワーキング系の装置を使い、ソフトウェアは別のベンダーの NOS やルーティングソフトウェアを組み合わせる、といった構成が考えられます。

これは、専用機として完成されたルーターを買うというより、ルーターを構成する部品を分け、それらを組み合わせて大きなシステムとして作る考え方です。

もちろん、これは単に安い装置を並べるという話ではありません。キャリアのバックボーンで使う以上、性能、冗長性、障害時の挙動、運用性、保守性まで含めて成立している必要があります。

Distributed とは何か

DDBR のもう 1 つの重要な言葉は、Distributed です。これは「分散された」という意味です。

従来の大型シャーシルーターでは、ラインカードやファブリックカードは 1 つの筐体の中に収まっていました。DDBR では、それらに相当する機能を複数の装置に分けます。

外部インターフェースを収容する装置があり、内部ファブリックを構成する装置があり、それらを高速なリンクで接続します。物理的には複数台の装置ですが、論理的には 1 つの大きなルーターとして扱うことを目指します。

ここが DDBR の特徴です。単に小型ルーターをたくさん並べるだけではありません。複数の装置を組み合わせて、キャリアバックボーンで使える大規模なルーターとして動かすところに意味があります。

何を解決しようとしているのか

DDBR が解決しようとしている課題は、従来の大型シャーシルーターが持っていた「強さの裏返し」とも言えます。

大型シャーシルーターは、高性能で高信頼な専用機です。しかし、その専用性が、コスト、拡張性、ベンダー依存、世代更新の重さにもつながっていました。

従来の課題DDBR での解消方向
導入コストが高い汎用性の高いハードウェアやオープンな構成要素を使い、コスト構造を見直す
ハードウェアとソフトウェアが密結合しているハードウェア、NOS、制御ソフトウェアを分離して考える
特定ベンダーへの依存が強い複数ベンダーの組み合わせを可能にし、選択肢を広げる
拡張がシャーシの制約を受ける複数装置を追加する形で、水平スケールを目指す
トラフィック増加に追随しにくい必要な容量を段階的に追加しやすくする
世代更新の単位が大きい構成要素単位での更新や段階的な移行をしやすくする

5G、クラウド、動画配信、AI 関連トラフィックなどにより、通信キャリアのバックボーンには継続的な帯域増加への対応が求められています。

ただし、需要の増え方は常に均一ではありません。地域、用途、接続先、サービス内容によって、必要な容量は変わります。

そのため、通信キャリアにとって重要なのは、単に大きなルーターを導入することではありません。必要な場所に、必要な分だけ、段階的に容量を追加できることです。

DDBR は、その変化に対して、より柔軟に追随するためのアーキテクチャだと言えます。

ただし、簡単な置き換えではない

一方で、DDBR は「安いホワイトボックスを並べれば、すぐに大型ルーターの代わりになる」という話ではありません。

むしろ、従来の大型シャーシルーターが 1 つの製品として内包していた複雑さを、外側に取り出すことになります。

ハードウェア、ASIC、NOS、ファブリック、制御プレーン、監視、障害解析、保守体制をどう組み合わせるかが重要になります。

従来の大型ルーターでは、これらの多くはベンダーが一体の製品として責任を持っていました。しかし DDBR では、構成要素が分かれる分、責任分界や検証範囲も複雑になります。

そのため、DDBR を導入するには、単に製品を買うだけではなく、アーキテクチャを理解し、検証し、運用設計できる能力が必要になります。ここを誤解すると危険です。

DDBR は、従来のルーターを安く簡単に置き換えるための魔法ではありません。むしろ、通信キャリア自身がネットワークの構造をより深く理解し、自分たちで設計・検証・運用する力を求められる技術でもあります。

DDBR を理解する時の見方

DDBR を理解する時は、「ルーターを小さくした」と見るより、「大型シャーシルーターの中にあった境界を引き直した」と見る方が分かりやすいと思います。

大型シャーシルーターでは、ラインカード、ファブリック、制御部、管理機能、保守責任が、1 つの製品の中で強く結合していました。DDBR では、それらを外へ出し、複数の装置とソフトウェアで再構成します。

分解すれば、自由度は上がります。ハードウェアを選びやすくなり、容量追加の単位も細かくなり、ベンダー選択の幅も広がります。

しかし同時に、何をどこで制御するのか、どこまでを 1 つのルーターとして扱うのか、障害時にどの範囲を影響範囲と見るのか、といった設計判断が前面に出てきます。

つまり DDBR は、箱としてのルーターを買う話から、ルーターというシステムを設計する話へ重心を移す考え方です。

まとめ

DDBR を一言で言えば、大型シャーシルーターの内部構造を、ラックスケールに展開した分散型ルーターアーキテクチャです。

従来の大型ルーターは、性能や信頼性を 1 つの専用筐体の中に閉じ込めて実現していました。DDBR は、その構造を分解し、複数の装置を組み合わせて、よりオープンで拡張しやすい形に変えようとするものです。

ただし、それは従来の大型ルーターを簡単に置き換えられるという意味ではありません。分解すれば、自由度は上がります。しかし同時に、設計・検証・運用の責任も外に出てきます。

DDBR は、キャリア向けルーターの作り方を変える技術であると同時に、それを扱う側の技術力も問うアーキテクチャだと思います。

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参考情報:

  • Telecom Infra Project
    通信インフラのオープン化を扱う業界プロジェクトです。
  • Open Compute Project
    オープンなハードウェア設計やデータセンターインフラを扱うプロジェクトです。
  • DriveNets
    分解型ネットワークアーキテクチャを製品として展開しているベンダーです。
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