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SSD は本当に寿命が短いのか – 5 年以上使って故障しない理由を考える

SSD が一般向け PC に普及し始めた頃、「SSD は高速だが寿命が短い」とよく言われていました。NAND フラッシュメモリには書き換え回数の上限があり、何度も書き込むとセルが劣化するため、長期間使うストレージとしては HDD の方が安全だという説明です。

しかし、私が現在使っている SSD には、5 年以上稼働しているものが複数あります。これまで SSD が故障した経験もありません。もちろん、個人の経験だけで SSD 全体の信頼性を判断することはできません。それでも、実際に長期間使えている状況を見ると、「SSD は寿命が短い」という認識が現在も妥当なのかは疑問です。

結論から言えば、SSD には確かに有限の書き込み寿命があります。ただし、それは必ずしも「SSD 製品は短期間で故障する」という意味ではありません。

SSD
Storage
PC ストレージ

Samsung SSD 990 PRO / 990 EVO Plus など

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SSD の寿命が短いと言われた理由

SSD がデータを保存する NAND フラッシュメモリでは、データの書き込み前にセルを消去する必要があります。この書き込みと消去の繰り返しを P/E サイクルと呼び、セルが耐えられる回数には上限があります。したがって、「SSD には書き換え寿命がある」という説明自体は正しいものです。

さらに、NAND フラッシュメモリは大容量化と低価格化のために、1 つのセルへ複数ビットを記録する方向へ進化してきました。SLC、MLC、TLC、QLC と記録密度が高くなるにつれて、セルの状態判定は難しくなり、素の NAND としての余裕も小さくなります。初期の SSD に対する不安には、このような技術的根拠がありました。

一方で、ここには混同があります。NAND セルには書き換え上限があることと、SSD 製品が短期間で壊れることは同じ意味ではありません。SSD は NAND をそのまま外部へ見せている装置ではなく、コントローラーとファームウェアによって管理されたストレージ製品です。

SSD はセルの消耗を分散している

現在の SSD では、特定のセルだけに書き込みが集中しないように、ウェアレベリングによって書き込み先を分散します。SSD 内部では、そのほかにもエラー訂正、不良ブロック管理、予備領域への置き換え、ガベージコレクション、書き込み先の再配置、読み出し条件の補正などが行われます。

Micron は managed NAND 製品について、メディア管理やエラー訂正を内部で処理すると説明しています。SSD と managed NAND は製品形態として同一ではありませんが、NAND をそのまま使うのではなく、内部の管理層によって扱うという考え方は共通しています。

NAND の微細化や多値化によってセル単体の扱いは難しくなりましたが、それと並行してコントローラーの管理技術も高度化してきました。SSD の寿命は、セル単体の書き換え回数だけでは決まりません。

実際の書き込み耐久性はどの程度なのか

SSD の書き込み耐久性は、一般的に TBW で示されます。TBW は Terabytes Written の略で、その SSD に対して累計で何 TB まで書き込めるかを表した指標です。製品保証では、購入からの年数と TBW のどちらか早く到達した方を保証期限とする場合があります。

Samsung の SSD 製品保証では、たとえば 990 PRO シリーズや 990 EVO Plus で、1 TB モデルは 5 年または 600 TBW、2 TB モデルは 5 年または 1,200 TBW、4 TB モデルは 5 年または 2,400 TBW とされています。

600 TB を 5 年間で書き切るには、単純計算で毎日約 329 GB を書き込み続ける必要があります。毎日 50 GB を書き込む使い方でも、累計書き込み量は次の程度です。

使用期間累計書き込み量
1 年間約 18.3 TB
5 年間約 91.3 TB
10 年間約 182.5 TB

OS、アプリケーション、ブラウザーキャッシュ、ログ、更新ファイルなどによる書き込みを含めても、一般的な PC で毎日数百 GB を書き続けるケースは限定的です。動画編集、データベース、大量の仮想マシン、ログ収集、キャッシュ用途などでは事情が変わりますが、通常のデスクトップ用途では、保証 TBW へ到達する前に PC や SSD 自体を更新する可能性の方が高いでしょう。

容量が大きい SSD ほど有利になる

SSD の容量が大きくなると、書き込みを分散できるセルの数も増えます。同じ 100 GB を書き込む場合でも、256 GB の SSD と 2 TB の SSD では、SSD 全体に対する書き込み量の割合が異なります。空き容量に余裕がある SSD ほど、ウェアレベリングが使える範囲も広くなります。

メーカーの保証 TBW が容量におおむね比例して増えているのも、この構造を反映したものです。Samsung の例では、1 TB で 600 TBW、2 TB で 1,200 TBW、4 TB で 2,400 TBW と設定されています。

初期の SSD は現在よりも容量が小さく、空き容量も限られていました。そのため、現在の大容量 SSD と比べると、同じ書き込み量でもセルにかかる負担は相対的に大きかったと考えられます。

SSD の故障原因は書き込み寿命だけではない

SSD が故障したからといって、NAND の書き込み寿命を使い切ったとは限りません。SSD は NAND フラッシュ、コントローラー、ファームウェア、DRAM やキャッシュ、電源回路、基板や接続部などの複数要素で構成されています。

構成要素想定される問題
NAND フラッシュセルの摩耗、データ保持力の低下
コントローラー制御不能、ドライブの認識不能
ファームウェア管理情報の不整合、特定条件での不具合
DRAM やキャッシュ管理情報や書き込み処理への影響
電源回路瞬断、電圧異常、部品故障
基板・接続部はんだ、端子、物理的な故障

USENIX に掲載された大規模調査では、NetApp のエンタープライズストレージ環境にある約 140 万台規模の SSD データをもとに、ファームウェアバージョン、TLC NAND、RAID グループ内の相関などを含めて SSD 信頼性が分析されています。SSD の信頼性は、単純な書き込み量だけでは説明できません。

また、電源断が書き込み中のデータや SSD 内部の管理状態へ影響することもあります。USENIX FAST 2013 の研究では、複数メーカーの SSD に対して電源断を再現し、条件によってビット破損、部分書き込み、順序不整合、メタデータ破損、デバイス故障などが観測されています。これは現在のすべての SSD が同じように壊れるという意味ではありませんが、SSD の故障要因が NAND 摩耗だけではないことを示す材料になります。

HDD にも別の寿命がある

HDD には、SSD のような明示的な P/E サイクルはありません。しかし、HDD にはモーター、回転するプラッター、磁気ヘッド、アクチュエーターなどの機械部品があります。書き換え回数の上限が明確に定義されていないからといって、HDD が無期限に使えるわけではありません。

HDD と SSD では、寿命の原因が異なります。HDD は主に機械部品や磁気記録の問題を抱え、SSD は主に半導体、電源、制御回路、NAND の摩耗に関する問題を抱えます。「HDD には書き換え回数制限がないので長寿命」「SSD には制限があるので短寿命」という比較は単純すぎます。

長期保管媒体として使う話は別である

PC に搭載し、定期的に通電しながら使う SSD と、取り外して何年も保管する SSD は分けて考える必要があります。NAND フラッシュメモリは、セルに蓄えた電荷の状態によってデータを保持します。P/E サイクルが増えてセルが摩耗した状態や、高温環境では、データを保持できる期間が短くなります。

そのため、SSD は日常的に使用する高速ストレージとしては十分な耐久性を持っていても、無通電で長期間保管するアーカイブ媒体として常に最適とは限りません。これは「SSD は 5 年で壊れる」という話ではなく、データ保持条件の話です。

5 年以上故障していないのは不思議ではない

私が使用している SSD には、5 年以上稼働しているものがありますが、一度も故障したことはありません。これは幸運だけで説明する必要はないでしょう。通常の PC 用途では書き込み量が TBW の上限に到達しにくく、SSD 内部では摩耗の分散やエラー訂正が行われています。容量に余裕があれば、書き込みも広い範囲へ分散できます。

もちろん、どの SSD も壊れないという意味ではありません。個体差もあれば、コントローラーや電源回路が突然故障する可能性もあります。それでも、現在の SSD について「書き込み寿命が短いので、数年で使えなくなる」と考えるのは、実態から離れた認識でしょう。

SSD 寿命論から考えるべきこと

SSD 登場時に語られた寿命問題は、完全な誤りではありませんでした。NAND フラッシュメモリには書き換え寿命があり、データ保持にも物理的な限界があります。この技術的事実は現在も変わりません。

しかし、その事実から「SSD 製品は HDD より短命である」と直結させるのは適切ではありません。より正確には、SSD の NAND には有限の書き込み寿命があるが、通常の PC 用途では十分に長く、実際の SSD 故障は NAND の摩耗だけでなく、コントローラー、ファームウェア、電源、基板など複数の要因によって発生する、という理解になります。

結局のところ、ストレージは SSD でも HDD でも故障します。重要なのは、故障しない製品を探し続けることではなく、故障してもデータを失わない構成を作ることです。SSD の書き込み寿命を過度に恐れるよりも、SMART 情報や総書き込み量を確認し、重要なデータを別の媒体へバックアップする方が、はるかに現実的な対策になります。

参考情報

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