集合は、数学で対象をひとまとまりとして扱うための基本概念です。日常語としては「ものの集まり」に近いですが、数学ではもう少し厳密に、ある対象が含まれるかどうかを判断できる形で扱います。
この記事は、集合について学び直したときのメモを、集合、要素、空集合、部分集合、無限集合、集合どうしの関係という順番で再整理したものです。厳密な集合論へ入る前に、まずは集合を「条件で対象を切り出す道具」として理解します。
集合とは何か
集合とは、ある条件に基づいて対象をまとめたものです。たとえば、果物、曜日、自然数、素数のように、対象を一つのまとまりとして扱うときに集合を使います。
集合を考えるときに大事なのは、「その対象が集合に含まれるかどうか」が判断できることです。なんとなく似ているものを集めるのではなく、入るか入らないかを区別できる形にします。
たとえば、部屋にある果物の集合を F とすると、次のように書けます。
F = {りんご, みかん, バナナ}
曜日の集合を W とすれば、次のように表せます。
W = {月, 火, 水, 木, 金, 土, 日}
ここでは、りんごは F に含まれますが、机や椅子は含まれません。月曜日は W に含まれますが、祝日は W の要素ではありません。このように、集合は対象を分類するための輪郭を与えます。
集合と要素
集合に含まれる一つひとつの対象を 要素 と呼びます。要素であることは、記号 ∈ を使って表します。
りんごが集合 F の要素である場合は、次のように書けます。
りんご ∈ F
一方で、ぶどうが集合 F に含まれていない場合は、次のように書けます。
ぶどう ∉ F
この「含まれる」「含まれない」を明確に扱えることが、集合の基本です。
空集合
要素を一つも持たない集合を 空集合 と呼びます。空集合は ∅ で表します。
∅ = {}
空集合は「何もない」そのものではなく、「要素を持たない集合」として扱う点が重要です。たとえば、「10 より大きく、かつ 5 より小さい自然数の集合」は、条件は定義できますが、その条件を満たす自然数は存在しません。この場合、その集合は空集合になります。
部分集合
集合 A のすべての要素が集合 B に含まれるとき、A は B の 部分集合 であるといいます。記号では次のように表します。
A ⊆ B
ここで注意したいのは、A と B が同じ集合であっても、A ⊆ B は成り立つという点です。部分集合は「完全に小さい集合」だけを意味するわけではありません。
一方で、A が B の部分集合であり、かつ A と B が等しくない場合は、A を B の 真部分集合 と呼びます。
A ⊂ B
また、空集合はすべての集合の部分集合です。直感的には少し不思議ですが、「空集合のすべての要素は B に含まれる」という条件が、要素が存在しないために破られない、と考えると理解しやすくなります。
和集合、共通部分、差集合
集合を使うと、複数の条件を組み合わせて対象を整理できます。代表的なのが、和集合、共通部分、差集合です。
| 名称 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|
| 和集合 | A ∪ B | A または B に含まれる要素の集合 |
| 共通部分 | A ∩ B | A と B の両方に含まれる要素の集合 |
| 差集合 | A \ B | A に含まれるが B には含まれない要素の集合 |
たとえば、A を偶数の集合、B を 3 の倍数の集合とすれば、A ∩ B は 6 の倍数の集合になります。集合を使うと、複数の条件を重ねた時に何が残るのかを見やすくできます。
無限集合
要素の数が有限ではない集合を 無限集合 と呼びます。自然数全体の集合や整数全体の集合は、代表的な無限集合です。
N = {1, 2, 3, …}
Z = {…, -3, -2, -1, 0, 1, 2, 3, …}
自然数は無限に続くため、有限時間ですべてを数え終えることはできません。ただし、1, 2, 3, … のように順番に列挙できます。このような無限集合は 可算無限集合 と呼ばれます。
たとえば、3 の倍数全体の集合を B(3) とすると、次のように表せます。
B(3) = {3, 6, 9, 12, 15, …}
7 の倍数全体の集合であれば、次のようになります。
B(7) = {7, 14, 21, 28, …}
自然数全体も無限集合ですが、その部分集合である偶数全体の集合や倍数全体の集合も無限集合になります。
例題で確認する
5、8、10 の倍数の集合
5 の倍数全体の集合を B(5) とすると、次のようになります。
B(5) = {5, 10, 15, 20, 25, …}
同じように、8 の倍数と 10 の倍数は次のように表せます。
B(8) = {8, 16, 24, 32, 40, …}
B(10) = {10, 20, 30, 40, 50, …}
B(m) ⊆ B(n) の意味
m の倍数全体の集合を B(m)、n の倍数全体の集合を B(n) とします。このとき、B(m) ⊆ B(n) が成り立つなら、m の倍数はすべて n の倍数です。
この関係が成り立つには、m が n の倍数 である必要があります。
たとえば、B(10) は B(5) の部分集合です。10 の倍数は、すべて 5 の倍数でもあるからです。
B(10) ⊆ B(5)
逆に、B(5) ⊆ B(10) は成り立ちません。5 は 10 の倍数ではないためです。
自然数 n 以下の集合
自然数 n に対して、n 以下の自然数全体の集合を F(n) とすると、次のように表せます。
F(n) = {1, 2, 3, …, n}
このとき、F(m) ⊆ F(n) が成り立つなら、m 以下の自然数はすべて n 以下の自然数にも含まれます。したがって、次の関係になります。
m ≤ n
素数の集合と奇数の集合
素数全体の集合を P とすると、次のように表せます。
P = {2, 3, 5, 7, 11, …}
奇数全体の集合を K としたとき、P ⊆ K は成り立ちません。なぜなら、素数には 2 が含まれており、2 は奇数ではないからです。
ただし、2 を除いた素数全体の集合であれば、奇数全体の集合の部分集合になります。
P \ {2} ⊆ K
集合は条件定義の練習になる
集合を学ぶ意味は、記号を覚えることだけではありません。対象をどの条件で切り出すのか、境界をどこに置くのかを考える練習になります。
これは数学だけでなく、分類、設計、ルール作りにもつながります。条件が曖昧であれば、集合に含まれるかどうかを判断できません。逆に条件が明確であれば、対象を同じ基準で扱えます。
集合は抽象的な概念ですが、実際には「何を対象にするのか」「どこから外すのか」を決めるための、かなり実用的な考え方でもあります。
まとめ
集合は、数学の対象をひとまとまりとして扱うための基本概念です。要素、空集合、部分集合、和集合、共通部分、差集合、無限集合といった考え方は、後の数学を理解するための土台になります。
この記事は厳密な集合論の解説というより、数学を学び直すときに最初に整理しておきたいメモです。日常的な「集まり」という感覚から出発しつつ、どの対象が含まれるのか、集合どうしがどのような関係にあるのかを確認していくと、集合という考え方が少し扱いやすくなります。
参考書籍
書籍
