日本の多くの事業会社では、システム開発を外部の専門企業であるシステムインテグレーター(SIer)やコンサルティングファームに委託することが一般的です。
この慣習の背景には、社内に十分な技術力や開発体制を持たないという事情があります。結果として、事業会社に所属するエンジニアは、設計や実装よりも調整・運用の業務が中心となり、技術的な成長機会を得にくい構造が生まれています。
事業会社でエンジニアが停滞しやすい構造
事業会社のシステム部門では、プロジェクトの多くがベンダー管理や要件調整に集中しています。そのため、コードを書くよりも会議資料や社内調整の時間が長くなり、技術スキルを高める余地が限られます。
また、経営層が IT を「コストセンター」として扱う傾向が強い企業では、エンジニアリングを評価する文化が育ちにくく、優秀な人材が集まりにくいのが現実です。
実際、経済産業省の IT 人材白書でも、内製化率の低さが課題として指摘されています。
SIer における成長環境
一方で、SIer ではプロジェクト規模が大きく、さまざまな技術要素に触れる機会が多いのが特徴です。
要件定義から設計・実装・運用まで一連の工程を経験でき、業種をまたいだ知見を得やすい点は、技術者としての厚みを増す上で有利です。
ただし、納期や品質管理のプレッシャーは大きく、長時間労働や多重請負構造などの課題も存在します。
それでも、技術的な挑戦を通じてスキルを磨きたいエンジニアにとっては、成長の土壌があるといえるでしょう。
事業会社の中にも変化の兆し
近年では、内製化や DevOps 体制を進める事業会社も増えています。
たとえば、自社でクラウド基盤を運用し、開発部門と運用部門の垣根を低くした組織では、SIer に匹敵するレベルの技術経験を積むことが可能です。
このような企業は、IT をコストではなく競争力の源泉と捉えており、エンジニアが中心的な役割を担う文化を形成しつつあります。
キャリアを構造的に見る
エンジニアがどこで働くかを選ぶ際に重要なのは、「会社の業種」ではなく「技術がどのように扱われているか」です。
事業会社であっても技術を重視する文化があれば成長は可能ですし、SIer であっても技術よりも管理業務に偏る環境もあります。
職場選びの際は、自分の技術がどの工程に活かされるか、どの領域で責任を持てるかを見極めることが鍵になります。
まとめ
日本企業のエンジニア文化は、まだ過渡期にあります。
事業会社・SIer のどちらが「正解」かではなく、自分の成長を支える構造があるかどうかを見抜く視点こそが、これからのキャリア形成において最も重要です。


