アメリカの研究チームが、アインシュタインが 100 年前に予測した重力波を初めて直接観測したと発表しました。重力波は大きな物体が動くと周囲の時空がゆがみ、そのゆがみが波のように広がる現象で、アインシュタインの一般相対性理論の予言を裏付けるものです。これにより、宇宙の謎や光や電波では観測できない天体現象の解明に期待が寄せられています。
重力波は、ブラックホールなど質量の大きな物体が動く際に生じ、1915 年にアインシュタインが一般相対性理論に基づいて予測しました。しかし、重力波は非常に微小なためこれまで直接観測されていませんでした。
観測装置は、光のずれを検出するためにレーザー光を使い、重力波によって時空がゆがみ光の距離が微小に変化することを利用しています。この観測は、アメリカのマサチューセッツ工科大学などの国際チームによって成功しました。
重力波は、宇宙の誕生直後やブラックホールの合体などで発生し、他にも多くの現象で観測されると考えられています。この観測は、アインシュタインの理論が正しいことを示すだけでなく、宇宙の多くの謎を解明する手がかりとなるでしょう。
以下は要約元の記事です。
◇一般相対性理論の正しさを改めて裏付け
物理学者のアインシュタインが100年前に予言した「重力波」を探索している米マサチューセッツ工科大など米国を中心とした国際研究チーム「ligo(ライゴ)」は12日未明、宇宙からやってきた重力波を初めて直接観測することに成功したと発表した。重力波の存在を予言したアインシュタインの一般相対性理論の正しさを改めて裏付けると共に、宇宙誕生のなぞや、光や電波では観測できない天体現象の解明に期待がかかる。
重力波は、ブラックホールなど質量の非常に大きな物体が動く際、周りの時空(時間と空間)がゆがみ、そのゆがみが波のように伝わる現象だ。アインシュタインが1915~16年に発表した一般相対性理論に基づき予言した。この理論は、宇宙の膨張やブラックホールの存在を示す数多くの観測などから正しさが確かめられてきたが、重力波による時空のゆがみは極めて小さいため、観測に成功した例はこれまでなかった。
ligoの重力波検出装置は、1辺4キロの管をl字形に配置。直角に交わる部分から2方向にレーザー光を同時に放ち、4キロ先の鏡によって戻ってきた光を重ね合わせる仕組みだ。重力波によって時空がゆがみ、光源と鏡との間の距離がわずかに変化するのを、重ね合わせたレーザー光のずれなどから検出する。
ligoは昨年9月から今年1月まで実施した観測のデータを詳しく分析。昨年9月に二つのブラックホールが合体した際に出た重力波を観測したとしている。
ligoチームは、米マサチューセッツ工科大と米カリフォルニア工科大を中心に15カ国の大学に所属する1000人以上の研究者が参加。2002~10年の観測では成功しなかったが、検出器の性能を向上させ、15年に観測を再開した。【河内敏康】
◇重力波
質量を持った物体が動いたとき、周囲の時空(時間と空間)にゆがみが生じ、そのゆがみが光速でさざ波のように宇宙空間に伝わる現象。物理学者アインシュタインが1915~16年に完成させた「一般相対性理論」でその存在を予言した。宇宙の誕生直後に放出されたほか、重い天体同士が互いの周りを回る連星や、ブラックホールの合体などでも生じると考えられている。米国の「ligo」のほか、欧州でも「virgo(バーゴ)」という検出装置が稼働中。日本でも東京大宇宙線研究所などが大型低温重力波望遠鏡「kagra(かぐら)」(岐阜県飛騨市)を建設し、昨年ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章・同所長らが検出を目指している。