AWS Outposts は、AWS のインフラストラクチャ、サービス、API、ツールをオンプレミス環境へ拡張するためのサービスである。AWS 公式ドキュメントでは、Outposts は 1U / 2U の Outposts servers から 42U の Outposts racks まで、複数のフォームファクターで提供されると説明されている。
ただし、同じ AWS Outposts という名前であっても、ラックタイプとサーバータイプは設計上の性格が大きく異なる。特にネットワークアプライアンスや NF 基盤として評価する場合、ネットワーク接続方式、ストレージ、可用性、保守運用の違いを明確に分ける必要がある。
本記事では、ラックタイプについては第 2 世代 Outposts racks を前提に整理する。
書籍
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基本的な位置づけ
| 種別 | 一次情報に基づく整理 | 設計上の読み取り |
|---|---|---|
| 第 2 世代 Outposts racks | 42U ラック型の Outposts。第 2 世代では compute rack と network rack を組み合わせる構成 | オンプレミスに AWS 基盤を配置するモデル |
| Outposts servers | 1U / 2U のサーバー型 Outposts | AWS 管理の EC2 実行環境を小型サーバーとして配置するモデル |
| ベアメタル | AWS Outposts ではない自前の物理基盤 | ネットワーク、ストレージ、仮想化基盤を自由に設計するモデル |
第 2 世代 Outposts racks は、Local Gateway、EBS、VPC、EC2、EKS、network rack などを含めて、オンプレミス AWS 基盤として扱いやすい。一方、Outposts servers は、AWS 管理の Nitro ベース EC2 実行環境を小型サーバーとしてオンプレミスに置くものとして捉える方が実態に近い。
ネットワーク接続方式の違い
Outposts racks と Outposts servers では、オンプレミスネットワークへの接続方式が異なる。
| 項目 | 第 2 世代 Outposts racks | Outposts servers |
|---|---|---|
| ローカル接続方式 | Local Gateway / LGW | Local Network Interface / LNI |
| VPC 側インターフェイス | ENI | ENI |
| オンプレミス側接続 | LGW を経由 | LNI を使用 |
| ネットワーク設計の中心 | LGW、VIF、VLAN、BGP、network rack | LNI、customer LAN、OS firewall、upstream switch / router |
| AWS 側ネットワーク制御 | VPC、route table、Security Group、LGW | ENI 側は VPC 制御、LNI 側は VPC 制御の対象外 |
AWS 公式ドキュメントでは、Outposts servers の LNI は、Outpost subnet 内の EC2 インスタンスをオンプレミスネットワークへ接続する論理ネットワークコンポーネントと説明されている。LNI は 1 EC2 インスタンスにつき 1 つであり、primary network interface としては使用できない。
このため、Outposts servers 上の EC2 インスタンスは、概念的には以下のように整理できる。
| IF | 接続先 | 主な用途 |
|---|---|---|
| ENI | VPC 側 | AWS 管理、AWS サービス連携、VPC 通信、Security Group 対象通信 |
| LNI | オンプレミス LAN 側 | ローカル通信、オンプレ機器接続、ネットワークアプライアンスのデータプレーン |
設計上の読み取りとして、Outposts servers の ENI は、EC2 / VPC として成立させるためには重要である。しかし、オンプレミス側のローカルデータプレーンや、異なる Outposts servers 間のローカル通信の主役にはなりにくい。ネットワークアプライアンス用途では、主経路は LNI 側になる。
Outposts servers の LNI 制約
Outposts servers の LNI には、ネットワークアプライアンス設計上重要な制約がある。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| LNI の数 | 1 EC2 インスタンスにつき 1 つ |
| primary network interface | LNI は primary network interface として使用できない |
| quota | LNI の quota は network interface quota から消費される |
| VPC networking components | LNI 側には Security Group、NACL、VPC route table、VPC flow logs などは適用されない |
| 制御方法 | OS firewall、オンプレミス側 firewall、switch、router 側で制御する |
このため、Outposts servers では、オンプレミス側に複数 NIC を直接アタッチするネットワークアプライアンス構成は取りにくい。外部接続は LNI 1 本に集約されるため、複数セグメントを扱う場合は、LNI の先で VLAN、subinterface、VRF、ルーティング、OS 側 firewall などを組み合わせる設計になる。
Outposts servers 間の通信
Outposts servers を複数台配置した場合、異なる物理サーバー上の EC2 インスタンス間通信をどう扱うかが重要になる。
AWS 公式ドキュメントでは、Outposts servers の物理接続として、service link traffic と LNI link traffic が説明されている。service link は Outpost registration endpoints や AWS Region との通信に使われ、LNI link は EC2 インスタンスがオンプレミスネットワークと通信するために使われる。
したがって、Outposts servers 間のローカル通信は、次のように整理するのが自然である。
| 通信パターン | 整理 |
|---|---|
| 同一 Outposts server 内の EC2 同士 | 同一サーバー内で直接通信できる |
| 異なる Outposts servers 上の EC2 同士 | サーバー内では完結しない |
| 異なる Outposts servers 上の EC2 同士のローカル通信 | LNI から customer LAN / switch / router を経由して通信する |
| ENI の役割 | VPC 側、AWS Region 側、AWS サービス連携、管理通信 |
| LNI の役割 | オンプレミス LAN 側、ローカルデータ通信 |
図にすると以下のようになる。
Outposts server A
EC2-A
ENI -> VPC / AWS Region side
LNI -> customer LAN
Outposts server B
EC2-B
ENI -> VPC / AWS Region side
LNI -> customer LAN
EC2-A と EC2-B のローカル通信:
EC2-A
-> LNI
-> customer LAN / switch / router
-> LNI
-> EC2-B
ここで重要なのは、異なる Outposts servers 上の EC2 同士を、ラックタイプのような内部ファブリック上の VM 間通信として扱わないことだ。Outposts servers を複数台並べても、それだけで 1 つのラック型 Outpost のような共通内部ネットワーク基盤が形成されるわけではない。
設計上の読み取りとして、Outposts servers の ENI は、AWS VPC 側に接続するためのインターフェイスである。ローカルネットワークやネットワークアプライアンスのデータプレーンを考える場合、実質的な出口は LNI になる。
Outposts servers における ENI の評価
Outposts servers の ENI は、仕様上重要である。EC2 として VPC に所属し、Security Group、AWS サービス連携、管理通信を扱うために必要である。
一方で、ネットワークアプライアンスや NF のデータプレーンという観点では、ENI の意味は限定的になる。
| 観点 | ENI の意味 |
|---|---|
| EC2 として VPC に所属する | 重要 |
| AWS 管理プレーンと連携する | 重要 |
| AWS サービス、Regional endpoints、PrivateLink 等へ接続する | 重要 |
| Security Group による制御 | 重要 |
| オンプレミス LAN へ直接出る | 主役ではない |
| 異なる Outposts servers 間のローカル通信 | 主役ではない |
| NF / ネットワークアプライアンスのデータプレーン | 基本的には LNI 側が主役 |
したがって、Outposts servers では、ENI を「内部ネットワーク用の主インターフェイス」と見るより、VPC / AWS 管理 / AWS サービス連携用のインターフェイスと見る方がよい。
ネットワークアプライアンス視点では、以下の整理が自然である。
AWS / VPC / 管理側
|
| ENI
|
EC2 appliance
|
| LNI
|
オンプレミス LAN / 外部ネットワーク
つまり、Outposts servers のネットワークアプライアンス設計では、ENI は control plane / management plane、LNI は data plane として評価するのが自然である。
ストレージの違い
Outposts servers と Outposts racks では、ストレージ面にも重要な違いがある。
| 項目 | 第 2 世代 Outposts racks | Outposts servers |
|---|---|---|
| EBS | 利用可能 | Outposts servers 上のインスタンスは EBS volumes を含まない |
| instance store | 利用可能 | Outposts servers 上のインスタンスは instance store volumes を含む |
| reboot 時 | 通常の再起動として扱いやすい | instance store のデータは保持される |
| terminate 時 | EBS に残せる | instance store のデータは保持されない |
| 長期データ | EBS、S3 on Outposts、外部ストレージ等 | S3、オンプレミスネットワークストレージ、外部設定管理等へ退避 |
AWS 公式ドキュメントでは、Outposts servers 上のインスタンスは instance store volumes を含むが、EBS volumes は含まないと説明されている。また、instance store 上のデータは reboot 後は保持されるが、instance termination 後は保持されない。
設計上の読み取りとして、Outposts servers 上の EC2 は、ローカルディスクを正本にする VM としてではなく、AMI、user-data、IaC、外部設定、外部ログ、外部データストアから再生成できる実行体として扱う方が適している。
障害時の考え方
第 2 世代 Outposts racks は、Outpost 内の compute / storage capacity を持つ基盤として扱われる。Outposts racks では、容量設計、EBS、配置戦略、アプリケーション側の冗長化を組み合わせて可用性を設計する。
一方、Outposts servers は単体サーバー型のフォームファクターである。サーバー障害や退役が発生した場合、AWS から通知され、影響を受けるインスタンスや instance store 上のデータを外部へ退避し、交換サーバーへ移行する運用になる。
| 項目 | 第 2 世代 Outposts racks | Outposts servers |
|---|---|---|
| 障害時の考え方 | Outpost 内の容量、EBS、アプリケーション冗長化を組み合わせる | 単体サーバー障害を前提に、外部化と再作成で復旧する |
| データ保護 | EBS や外部ストレージを利用可能 | instance store の正本化は避ける |
| ネットワークアプライアンス | 基盤側の容量・ストレージ・LGW を使った設計が可能 | appliance OS 層と上位ネットワーク側の切替で冗長化する |
| 復旧単位 | インスタンス、EBS、Outpost 内容量 | AMI、IaC、外部設定、外部データ |
Outposts servers でネットワークアプライアンスを動かす場合、仮想 MAC や L2 依存の HA より、BGP、static route、health check、DNS、LB など、L3 以上の切替方式を中心に検討する方がよい。
保守・運用
AWS Outposts は AWS が管理するサービスである。ただし、ラックタイプとサーバータイプでは、物理保守時の作業主体が異なる。
| 項目 | 第 2 世代 Outposts racks | Outposts servers |
|---|---|---|
| AWS が管理する範囲 | Outposts equipment、software patch、firmware、性能・ヘルス・メトリクス監視など | Outposts equipment、software patch、firmware、性能・ヘルス・メトリクス監視など |
| 物理交換 | AWS installation team が現地で対応するモデル | AWS が交換プロセスを開始し、交換機と返送ラベルを提供する |
| 利用者側作業 | 施設、電源、ネットワーク要件の維持 | サーバーの取り外し、交換機の設置、梱包、返送など |
| 運用上の性格 | AWS 現地保守モデル | AWS 管理機器のセンドバック運用に近い |
Outposts servers では、AWS が交換サーバーを送付し、返送ラベルを提供する。利用者側では、対象サーバーの取り外し、交換機の設置、故障機の梱包、返送を行う必要がある。
このため、Outposts servers を採用する場合は、通常の AWS Region の EC2 と同じ運用感覚ではなく、オンプレミス機器としての設置、交換、返送、保守窓、現地作業者の手順を含めて設計する必要がある。
ネットワークアプライアンスとしての評価
一次情報に基づく制約を踏まえると、Outposts servers はネットワークアプライアンス用途で使えないわけではない。ただし、用途は限定される。
| 用途 | Outposts servers での評価 |
|---|---|
| L3 router | LNI 1 本で成立する範囲では検討可能 |
| Proxy | ステートを外部化しやすいため比較的扱いやすい |
| VPN gateway | 証明書、鍵、設定を外部管理する前提で検討可能 |
| Firewall | 小規模・L3 前提では検討可能 |
| 多 NIC firewall | LNI 1 本の制約により不向き |
| L2 bridge | LNI の性質上、不向き |
| IDS / packet capture | L2 / promiscuous 的な用途には不向き |
| 本格 NFV | NIC、ストレージ、冗長化の制約が大きい |
設計上の読み取りとして、Outposts servers は「AWS 管理の Nitro ベース EC2 実行環境をオンプレミスに置く」ことに価値がある。一方、ネットワーク自由度、多 NIC、ストレージ自由度、L2 制御を重視する場合は、ベアメタル構成との比較が必要になる。
ベアメタルとの比較
Outposts servers をネットワーク基盤として検討すると、ベアメタルとの比較が必要になる。
| 評価軸 | Outposts servers | ベアメタル |
|---|---|---|
| 仮想化基盤 | AWS 管理の EC2 実行環境 | 自前で KVM、VMware、その他基盤を設計 |
| API | EC2 API | 自前 API、libvirt、OpenStack、管理ツール等 |
| イメージ | AMI | 自前イメージ、PXE、テンプレート等 |
| 権限管理 | IAM | 自前の認証・認可 |
| 監視 | CloudWatch、AWS Health 等 | 自前監視基盤 |
| NIC 自由度 | LNI 1 本の制約 | 物理 NIC、bond、VLAN、SR-IOV 等を自由設計 |
| ストレージ自由度 | instance store 中心 | local disk、RAID、SAN、Ceph 等を自由設計 |
| NF 適性 | 限定的 | 高い |
| 保守 | AWS 管理 + 利用者交換・返送 | 自社またはベンダー保守 |
Outposts servers の利点は、EC2 API、AMI、IAM、CloudWatch、AWS Health、Nitro ベースの実行環境を利用できる点である。これは、単なるベアメタル + KVM にはない利点である。
一方で、ネットワークアプライアンスや NF のように、NIC 構成、ストレージ、L2 / L3 制御、冗長構成の自由度を重視する場合、ベアメタルの方が設計しやすい場合がある。
最終整理
| 種別 | 採用理由 |
|---|---|
| 第 2 世代 Outposts racks | オンプレミスに AWS 基盤を配置し、EC2、EBS、LGW、EKS などを統合的に使いたい場合 |
| Outposts servers | 小規模拠点やエッジで、AWS 管理の EC2 / Nitro 実行環境を使いたい場合 |
| ベアメタル | ネットワーク自由度、ストレージ自由度、多 NIC、NF 適性を重視する場合 |
Outposts racks と Outposts servers は、同じ AWS Outposts という名前を持つが、設計上の性格は大きく異なる。
第 2 世代 Outposts racks は、オンプレミスに AWS 基盤を配置する選択肢である。Outposts servers は、AWS 管理の EC2 実行環境を小型サーバーとしてオンプレミスに配置する選択肢である。
特にネットワークアプライアンスや NF 基盤として評価する場合は、LNI 1 本、EBS なし、サーバー間内部ファブリックなし、物理交換・返送作業あり、という Outposts servers の前提を明確にした上で、ベアメタルや第 2 世代 Outposts racks と比較する必要がある。
Outposts servers の ENI は、EC2 / VPC としての接続、AWS 管理、AWS サービス連携には意味がある。一方、ローカルデータプレーンや異なる Outposts servers 間のローカル通信では、LNI と customer LAN が主役になる。ここを誤ると、Outposts servers をラックタイプの小型版として誤解してしまう。

