Cisco の HSRP (Hot Standby Router Protocol) を活用する際、オブジェクトトラッキングを組み合わせることで、ネットワークの切り替え処理をより効率的に行うことが可能です。
通常、HSRP は ルーターの LAN 側インターフェイスの状態を相互に監視し、片側のルーターがダウンした際に、HSRP 仮想 IP アドレスを引き継ぎます。これにより、それをゲートウェイとして指定しているエッジのゲートウェイの冗長性を確保しています。一方、WAN 側のインターフェイスがダウンした場合、不要なルーターを経由した通信となり、通信の非効率化につながります。
オブジェクトトラッキングを利用することで、WAN 側インターフェイスの状態を監視し、その状態に応じて HSRP の優先度を調整することができます。つまり、WAN 側インターフェイスがダウンした場合、HSRP の優先度を下げることで、不要な通信経路を避けることができます。つまり、この技術は「方系の障害時においても最小限のホップ数で通信が可能」ということです。
これにより、ネットワークの冗長性を維持しつつ、通信の効率化を図ることができますが、そもそも片方のルーターがダウンしている状態が正常な状態では無い点と、あえてオブジェクトトラッキングを組み合わせなくても、非効率な通信であることを除けば通信は可能ということで、このような仕組みが存在することにすら気づいてないエンジニアも多いと思います。
Cisco はネットワークの創世記から存在しているネットワークプロダクトのプロバイダーであり、特にシステム全体でいうところの低レイヤーの技術が得意分野です。つまり、現代のように高帯域なネットワークではなく、非常に通信品質の悪い環境から育ってきた企業であるため、IP ネットワークの制御技術を全て持っていると言っても良いと思います。言い方を変えると、IP ネットワークいう点では、Cisco を選んでおけば間違いがないともいえます。
本題の HSRP とオブジェクトトラッキングも、特に 5G などの超低遅延化を目指すような環境においては重要な技術であることに変わりありません。